Toxic・Romance
実はあの日、片桐さんとラブホテルに宿泊した日、勝手に情報を抜き取られてしまった。
「エアドロの設定、どうしてる?」
一緒に入浴という恥ずかしさ満点のイベントは、虹色にライトアップされたバブルバスがかき消した。それに感動して写真を撮っていると、彼は何でもないことのように聞いてきた。
「えあどろ?」
首を傾げて見上げると、「あー……」と、片桐さんは何かを察したように遠い目をした。これはまずい。
「エアドロ、知ってますよ! エアドロですよね、エアードロップキップですね! プロレスの! 相撲技に似てるのがあるんですよね!!」
「相撲?」
不敵な笑みは、すべてを見透かしているような気がして、すぐに白旗を振る。
「うぅ……ごめんなさい、しりません……。えあどろ……なんですか、それ……」
「設定、確認させて」
言われるがまま、スマホを渡すと、湯船に浸かりながら設定をいじられて、いつの間にか連絡先を交換してしまった。
「詐欺罪で訴えますよ!?」
「自分の情弱を嘆いた方がいいんじゃないの」
「むぅ……パワハラで訴えられないだけありがたいと思ってくださいね」
「パワハラ?なんのこと?」
「あの威圧感のあるメール、結構ショックなんですよ!」
日頃の、あの自販機のような事務連絡への不満をぶつける。「それが仕事だろ」と一蹴されるかと思っていた。なのに、片桐さんは湯気の中で少しだけ目を細め、ただ一言。
「気を付ける」
とだけ言った。