Toxic・Romance


 その言葉が、あんなに丁寧なメールになって届いたのだと思うと、さっきまでの感動が、じわじわと気恥ずかしさに変わっていく。

「(……本当に、気を付けてくれたんだ)」

 温度のないひとだと思っていたのに、今はなぜか、

「(可愛いかも……?)」

 にくめない存在に変化しているのも、歴戦の勇者たる彼の手のうちなのかもしれない。





 果音(かのん)から連絡が来たのは、その日の午後だった。

 仕事中に、ついうっかり開いたメール。久しぶり、という書き出しだけで、胸の奥がきゅっと縮んで、指先が一瞬、止まった。まようほどの理由はないはずなのに、返事を打つまでにすこしだけ時間がかかった。

《そろそろ夕結と会いたいよ〜!ご飯行こ?合わせるから!》

 やっぱり金曜かな!と、果音は無邪気に付け足した。

 果音は私の、幼なじみの一人だ。昔は気兼ねなく会えた相手。今は何かと理由を作って避けていた相手。しかし、そろそろまっとうな理由も底を尽きかけていた。

「(会う、かあ……)」

 最近の金曜日は片桐さんにささげている。この傾向に基づけば、今週も片桐さんの日になりそうなので《今週の金曜はむりです》と片桐さんには予め伝えた。すかさず《じゃあ土曜にするか》と言われて「ぅえっ!?」と、変な声がでた。

 どちらを犠牲にしたのかわからなくなった。あるいは、救われたのか。
< 106 / 249 >

この作品をシェア

pagetop