Toxic・Romance
 父親同士が同じ会社に勤めているという理由で、私と果音は幼いころからずっと一緒にいた。幼稚園から高校まで同じ女子校だった。

 私よりも社交性があって、誰とでもすぐに打ち解けることができて、輪の中心にいるような果音。私は果音をきっかけに、果音がつくった輪の一部に、いつも招かれていた。

 そんな果音との空白だった時間を埋めるように、他愛のない話が続いた。仕事のこと、住んでいる街のこと、最近ハマっていること。

 私と果音と、もう一人。

 何をするにも私たちは三人だった。

 不意に、果音が懐かしそうに目を細める。

「そういえば、(こう)くんなんだけどさ」

 その名前が出た瞬間、胸の奥でほんのちいさな不発弾が、しずかに弾けた。

 何も知らない彼女は悪気もなく話し続ける。

「相変わらずだよ。忙しいって言いながら、無理ばっかりしてさ。この前もロンドンとのミーティングが長引いたって、三日くらいほとんど寝てなかったみたい。外資って、ほんと大変だよね」

 果音はくるくるとストローを回しながら、少し困ったように笑った。

 私はただ、うなずいた。相槌を打つタイミングだけは、私の処世術のひとつだ。
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