Toxic・Romance
果音は、私の知らない話ばかりを紡いでいく。洸がいつから、どんなふうに、何を選んで、今どこにいるのか。連絡を断っていた私には、今の彼は、物語の登場人物よりも遠い存在だった。
「でもさ、洸くんってそういうの言わないで溜め込むタイプじゃん?だから私がちゃんと見てないと、って思って」
それは愚痴の形をした、親密さの共有だった。けれど、それは片桐さんにも言えることだ。
片桐さんの方が大変なんて知らないし。知らずの間に配慮されていたことも、一人で抱え込んでいることも、残業ばかりしていることも、何も知らない。
考え始めるとフラストレーションが募ってしまう。
「でもね」と、果音は少しだけ声を落として、楽しそうにつづけるから、会話の途中を思い出した。
「そういうところも含めて、洸くんらしいなって思わない?昔から、頑張りすぎるところ、変わらないよね」
まるで、三人でいたころを、同じ宝物として覚えているみたいな言い方だった。
カフェで待ち合わせたその時から、果音の左手の薬指にはシンプルで主張しすぎない指輪があって、なぜ呼び出されたのかも、私はうっすらと気づいていた。
「あ……」
視線に気づいた果音が、少し照れたように笑う。