Toxic・Romance
私の視線に気づいたのか、果音は少し照れたように笑う。
「ね、聞いてほしくて」
その言い方が、もう答えみたいだった。胸のおくにくすぶったザラりとしたものが、もう一段階、苦しくなった。
「……婚約、したんだ」
その言葉が意味を結ぶより先に、私の脳裏にはひとつの名前が浮かんだ。
──洸と。
どうして、そう思ったのかは分からない。理由なんて、後からいくらでも作れる。三人だった時間。果音と洸。連絡を取っていない私だけが知らない二人の距離。そして、二人が恋人だった事実。
すべて、ごく自然に、一本の線でつながってしまった。
「……そっか」
喉の奥が、少しだけ詰まった。
でも、笑った。じょうずかわからないけれど、下手くそでも、ちゃんと笑えた。
「おめでとう」
自分でも驚くくらい、声は安定していた。
「ありがとう」
果音は嬉しそうに、指輪を指でくるりと回す。
ああ、どうしよう。自分で思うよりずっと苦しい。
「ずっと一緒にいたし、なんだか不思議だよね」
そうだね、と頷きながら、私はカップを持ち上げた。指が震えないように、意識を集中させる。
苦しいけれど、泣きそうだけど、祝福しなきゃいけない。幼なじみとして。二人の、大事な友達として。
それくらい、できると思った。
「夕結が最初に言ってくれて、よかった」
果音の笑顔は、どうしても直視できなかった。