Toxic・Romance

「ゃ、」と、吐き出した声は震えていたけれど、とてもちいさな声だったから、おそらく聞こえてないと、おもう。

「なんでもなくて。ちょっと、話を聞いて欲しいな、なんて思って。……あ、今から良いですか?なんならLINEでもいいので、あとで打ちます、よかったら……」

 支離滅裂な私のつたない言葉を遮るように、彼は短く。

『わかった、わかった。だからとりあえず、今どこにいるかだけおしえて?』

 右に上がりゆくように紡がれた、やわらかい声。

 は、と短く、吐息のような声がこぼれた。

「かたぎりさん」

「うん。月島さん」

 たすけて、と言えば、わかった、と片桐さんはうなずいた。

 ぽたり、地面に涙の粒が落ちた。

 数十分後。指定した公園のベンチでうずくまっていた私の前に、息を切らして駆けよってきた片桐さんのすがたが見えた瞬間、視界が急激に滲んだ。

「大丈夫?」

 イヤホンよりもクリアで、いっとうやわらかな声。急いできてくれたことがうれしくて、ほんの少し申し訳なくて、うんうんと何度もうなずいて、それから「さっきまで、友達と会ってました」と、笑ってみせた。


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