Toxic・Romance

「友達と会ってたって、そんな顔には見えないよ」

 困ったように片桐さんは眉根を寄せた。
 
「どんな顔にみえますか?」

 聞き返した声は、自分でも驚くほど落ち着いている。ほんとうは、今にも泣き出しそうなのに。

「赤字続きのクソだるい案件を丸投げされた上、行きたくもない飲み会に招集されて、無意味な二時間を過ごしたあとに上司の尻拭いをする羽目になった時の俺の顔に似てるね」

 ゆるやかな声は内容だけがやけに生々しくて、一瞬、落ち込んでいたことをわすれてしまった。

「そんなことがあったんですか?」

「まあ、こういうのは一通り経験するよね」

 そうなのかな?……そうかもしれない。ていうか、私の場合、ほとんどが片桐さんによって植え付けられた経験だ。けれど、片桐さんは絶対に、自分の尻拭いはさせてくれなさそうだな、なんて予想しながら、力なく笑った。

「片桐さん」

「んー?」

「無理を承知でお願いしていいですか」

「うん。言ってみ?」

 言えば来てくれたから?それとも、やさしさに触れたから?二度、朝まで共に過ごしたから?

 浅くて、一方的で、理由にもならない自信が私を後押しする。どうしてもこの人を信じてみたくて。ううん、信じてみれば?と、心の中で誰かがささやいて、片桐さんの袖口をそっと掴んだ。




「……今夜、一緒にいてください」


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