Toxic・Romance

 でも、そういえば、片桐さんは残業続きなんだっけ……。

 疲れて思考回路が正常にはたらいていないのかもしれない。

 それなのに、私情で片桐さんを呼びつけるなんて……

 月島夕結の馬鹿!馬鹿馬鹿馬鹿!いくら苦手な相手とはいえ、配慮が足りない!もう一度小学生の道徳からやり直しなさい!

「送っていただいてありがとうございました。それと、こんなことに片桐さんの貴重な時間を費やしてしまって、ごめんなさい」

 いまさら、申し訳なさがむくむくと膨れ上がって。いたたまれなくなった私は深々と頭を下げた。片桐さんはすぐに反応をくれない。それが私の不安を煽った。

「かなしいこと言うのな、きみは」

 不安を解すように、やわらかな声。え?と言葉なく見上げる。一瞬、目が合った片桐さんは、ゆらり、その視線を宙に漂わせ、私を見つめた。

「俺は、月島さんに頼ってもらうことを時間の無駄とは思ってないよ」

 大事そうに紡がれた言葉が、私の心臓をめがけて一直線に届いて、みぞおちの少しうえ付近がやわっこく痛んだ。
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