Toxic・Romance

 その打診は、いつもより少しだけ改まった口調だった。

「月島。グループ横断プロジェクトの話がある」

 部長に呼ばれたミーティングルームにて、資料を差し出された。聞きなれないプロジェクト名と、表紙に大きく記されたタイトル。

『TOKYO “LOST & FOUND” ── 忘れ物と再会の物語』

「(ひ、ひと昔前のドラマみたいなタイトル……)」

 今の時代に果たして刺さるのかな?と、プロジェクト名に疑問視を抱きながら企画書を捲った。

「青藍グループ全体で動く大型企画だ。大手鉄道会社と飲料メーカーのタイアップで、SNS連動型の街歩きキャンペーンになる」

 タイトルの絶妙なダサさは置いといて、説明を聞くほどに、世界が立体的に立ち上がってくる。

 駅の片隅、カフェの窓際。誰かが置き忘れた、日記や傘、さびしそうなぬいぐるみ、それらがすべて宛名のない手紙。

「参加者は忘れ物を拾って、物語を追う。君には、その核であるシナリオを書く役をお願いしたい」

「えっ、私がですか!?」

「ああ。どうする?」

「します!ぜひ!させてください!」

 被せ気味に答えは口をついて出た。声が少しだけ上ずったのが、自分でもわかった。
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