Toxic・Romance

「月島さんも参加だったんだ。心強いよ」

 そのひとは歳も近く、何度か顔を合わせたことのある人だった。顔を合わせる度に話しかけられていたので、その流れで今回も気をかけてくれたのだろう。

「こちらこそ、安心しました」

 軽く会話をして、その流れで空いている席に腰を下ろした。

 もう一度片桐さんの方を見た。けれど彼の興味はすでにわたし以外にあるらしく、別の社員さんと話していた。

──「(残念)」

 片桐さんに挨拶したかったなあ……なんて、独りよがりで稚拙で、くすんだ部分を隠すように、持参したノートパソコンを開いた。

 ほどなくして、プロジェクトの概要説明が始まった。最初に軽い自己紹介をした。片桐さんの番は拍手を丁寧にした。自分の番は名前を噛んでしまった。月島って苗字は言いにくいから仕方ないと思う。

 スクリーンに映し出されるタイトルを見て、やっぱり、少しだけ惜しいな〜と、歯がゆさを感じた。

 進行役の説明が続く。企画の構造を聞くと緊張や不安よりも、わくわくした。早く携わりたい、書きたいと。

 言葉が頭の中で組み替えられていく。気づけば、手元のメモに走り書きをしていた。

「……以上が全体像です。何か質問や意見があれば」

 一瞬の沈黙が広がった。この空気感は何度か経験したことがある。誰かが最初に口を開くのを、みんな待っている、そんな雰囲気。そしてこれを逃すと、タイミングと本質を逃がすことになる。

 ……言う?言っちゃう?

 心臓が早鐘を鳴らした。

 目立ちたいわけじゃないけれど、選ばれた理由があるなら、それをちゃんと使いたかった。
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