Toxic・Romance
そろりと力なく手を挙げた。
「すみません。ひとつ、提案というか……言葉の話、なんですけど」
瞬間、視線が集まるのを感じて喉が少しだけ渇いた。けれども声は思ったより落ち着いていた。
「“LOST & FOUND”って、とても分かりやすいと思います。でも、今回の企画って、必ずしも見つかる話ばかりじゃない気がして。忘れたままのものとか、見つからないからこそのこる感情もあるはずなので……もし可能なら、タイトルに少しだけ余白を持たせてもいいのかな、って」
言い切ったあと、急激な不安に陥った。
出しゃばった? 生意気だった? こんな新卒が何話してるんだよって思われた?
ぐるぐると思考回路の渦が、後悔に飲み込まれそうになった。けれど視線を上げた先で、片桐さんが、こちらを見ていた。安心感から、泣きそうになった。
「……たとえば?」
誰かがそう促す。緊張を吐き出して、息と自信を吸ってから答えた。
「たとえば……今咄嗟に思い浮かんだのは“見つかる”より、“出会ってしまう”とか。“忘れ物”というより、“置いてきたもの”みたいな言葉、どうかなって」
ふたたび沈黙が広がる。でも、さっきとは違う種類の静けさだと思った。
おそるおそる視線をスライドさせた。
片桐さんが、ほんの一瞬だけ口角を上げるのを見た。