Toxic・Romance
片桐さんは私がつられそうになった、オレンジジュースを片手で掴むとぐいっと飲み干した。喉仏がゆるりとうごく。色っぽい。グラスを軽々と掴む骨ばった大きな手も色っぽい。ほっそりとした白い肌は女性のそれと見紛う指先。黒も映えるけれど、オレンジ色にもよく映える。この手の温度を私は知っている。
個室の喧騒のなか、そんな彼の一部にさえ勝手に目を奪われていると「なに?」と、片桐さんが私にきづくから「なんでもありません」と、即座に逃げる。
しかし、片桐さんにとってもあまり不要な疑問だったらしく、切れ長の瞳は別の何かを捉える。
「あれと仲良いの」
「あれ?」
「それ」
「どれですか」
雑な言葉にちょっとだけ憤りを感じながら、しっかりと考えていると、片桐さんは私の耳元に顔を近づけた。
「となりの男」
吐息が耳にかかる。まるで私と秘密を共有するような音量に、耳輪が熱くなるのを感じて、あわてて耳を手で隠した。
「ほぼ初対面です」
「本当かよ」
「本当です」
「見張ってないと、誰かにさらわれそうだ。夕結ちゃんは」
「!」
みんなの前で名前呼びは無しってお願いしたのに……!!