Toxic・Romance
これでもし、過剰な反応をすれば興味も薄れるだろう。片桐さんが無頓着だからこそ私は調子づく。
「片桐さん、写真撮っていいですか」
「勝手に撮ればいいじゃん」
「無許可はだめですよ」
「慣れてるからいいよ」
「慣れちゃだめでしょう」
至極当たり前の反応だったと思う。すると目を瞑ったままの片桐さんの口角がすっと上がる。それがなぜか、悲しい微笑みだと思った。
「……え、冗談ですよね?」
伺うように訊ねる。けれど、返事はない。
無許可で写真を撮られることに慣れる?片桐さんって、アイドルとかモデルだった?それとも、過去スポーツクラブで?
私の中で可能性をみつける。けれども、どれも正解はないと思えた。彼が『慣れた』ものは、隠し撮りの類になるのだろう。
「本当に?」
私もまた、主語なく訊ねた。
「最近はほとんどないよ。でも、学生のころはひどかった。俺のプライバシーなんてあってないようなものだったし」
「え……たとえば?」
「ものが無くなったり、かと思えば身に覚えのないものがポケットや鞄に入ってたり、俺のLINEを知らないやつが知ってたり?」
まあ、そんな感じ。と、片桐さんは目を開いた。
「創作のプラスになった?」
彼は他人事のような現実を告げると、もう、いつもの笑みを浮かべている。
「なりません」
しかし、私は簡単に切り替えられない。
だって、絶対に、簡単に扱っていいことばじゃない。