Toxic・Romance
私より年上で、私より遥かに人気があって、選り取りみどりであるだろう男性が、なぜただしい恋愛を知らないか。そうだ、彼は自分の恋愛を他人のように話す。それはいつも、何か諦めのようなものが滲んでいた。だから私の創作意欲を駆り立てたんじゃないか。
「……とりあえず私は今日の分をメモしながら見ます」
半ば強引に考えるのをやめて、スマホを取りだした。いつものメモアプリを開いた。今日、肌で感じたことを文字に起こして言葉を紡ぐ。楽しい。
心は確かに動くものだ。けれど、その瞬間はとても静かだ。思い出は写真で切り取ることが出来るけれど、心が動く瞬間は言葉で伝えるか、文字に託す以外になにもない。
「楽しそうに没頭するね」
「楽しいです!」
自信はないけれど、自慢の趣味だ。それから、たとえ人には言えないこの趣味を知っても、貶さないでいてくれる人が近くにいるのも自慢のひとつだ。
「なんか月島さんを見てると、相手がどう思うとかよりも単純に、笑っていてくれれば良いんだと思えるわ」
片桐さんにとっては何気ない言葉だったと思う。しかし、何故か琴線に触れた。
「それって、どういう……」
引かれるように下を向けば、思いがけず視線が重なる。