Toxic・Romance


 
 異性の部屋、という場所を、私は身内か幼なじみ以外知らないし、まさかそれ以外で初めて足を踏み込むその場所が、片桐さんの部屋になるとは思っていなかったし、それもまさか私みずから『行きたい』と願うなんて。

 片桐さんの部屋は整然としており、まるでモデルルームのようで、どこもかしこもいい匂いがした。好きな香りなのに、落ち着かない。だって、たまに片桐さんの服から漂う香りと同じだからだ。

「その辺に荷物置いて、こっち、おいで」

 セミダブルサイズの、やや大きなベッドに腰掛ける片桐さんに招かれる。片桐さんの荷物の隣に自分の荷物を置いて、ちょこんと座る。

「ここ、片桐さんのベッドですか?」

「そりゃそうだよ」

「(ですよね)」

 当たり前のことに納得していると、私の肩をゆっくりと押すように倒され、背中がマットレスに沈み、髪の毛が広がる。始まりを予感めく。

「今日、ずっと緊張してたでしょ」

 片桐さんは私の髪の毛を指で払い、やさしく横へ流すと、穏やかな視線を送る。

「バレてました?」

「バレてた。ゆっくり休みなよ」

 そう言って布団を掛けられた。ベッドの中はあたたかい。わたしの体温はゆっくりとこの中へ閉じ込められてゆくと、深夜であることと緊張の糸が切れたみたいに睡魔が襲ってきた。
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