Toxic・Romance


 予定通りじゃないけれど、中身が凝縮されていた週末。週明け、片桐さんとの遭遇は偶然だった。平常通り片桐さんの雑メールと戦った私は、社食の美味しいご飯でパワーチャージして午後からの業務に取り組もうとしていたのだ。喫煙所ではなく、カフェスペースで片桐さんを見かけた。話しかけようと試みたけれど、でも、周りに同僚だろう女性が数人囲っていた。

「今日の片桐くんのネクタイ、可愛い」

 いつもは見過ごす。けれど、それでも話しかけたかったのは、片桐さんの首元に私が贈ったあのネクタイが結ばれていたからだ。

 似合う。すごく似合う。片桐さんはいつも、紺や青といった寒色のネクタイが多い。似合うけれど、美しいからこそ冷たく感じる。だから近寄り難いイメージが柔らかくなった気がする。これはたぶん贔屓目だ。

「触んな、崩れる」

 笑っているけれど、片桐さんは嫌そうにしている。

「絶対プレゼントだ。しかも女の子」

「そうですよ」

「妹?友達?それとも彼女?」

 ばくん!と心臓が跳ねる。同時に、すばやく物陰に隠れた。おそらく、いま見つかるのはよくないって女の勘が働いたのだ。

「ほんと、かわいいよね」

 片桐さんは褒めるだけで、誰からもらったのか明言しない。
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