Toxic・Romance
「誰?」

 そのうちの一人の女性が私にきづいた。それはそうだ。私はカメレオンのような擬態能力はないし、透明マントももっていない。

「AInueの子。仕事でお世話になってる」

 立ち回りに困惑していれば、片桐さんは平然と肩書きで話すので「そうです、お世話されてます!」と、当たり障りのない返事をする。そうです、そうですとも、片桐さんには扱き使われているので、間違いではない。

「あー、じゃあ、仕事の話?」

 弁明させて欲しい。私は、はい、を言おうとした。

「んー、その髪のやつ、かわいいねって」

 私より何枚もうわてな片桐さんは、私をあざ笑うように白々しいうそを吐くではないか。

「!」

 頬やうなじに熱が通うのがわかる。
 
「どうしたの、それ」

 片桐さんがいじわるを言う。何も知らない同僚さんたちの視線が私に集中する。ぎゅうっと握りしめた手のひらに汗がにじむ。

「……も、もらいもの、です……」

 弱々しい声を吐き出すけれど「その反応、彼氏からだ!」と、どうにも信用されていない。私は無実だ。

「ち、ちがいますよ!彼氏じゃないです、彼氏なんていません!私の恋愛遍歴、真っ白ですよ!」

「えー!?本当に!?あ、わかった。じゃあ、好きな人だ」

 私の反論はたぶん完璧だったはずなのに、逃げ場がなくなるのはなぜか。

「あ、ぅ……」

 なにも言えずにうろうろと視線をさ迷わせていると「そういえば聞きたいことあったんだ。少しいい?」と、片桐さんはやわらかく言葉を紡ぐので「……っ、チャットでお願いします!」と、つよがって背を向けた。
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