Toxic・Romance


 オフィスに戻り、スマホを開くと感想が届いていた。

“二人の恋心にきゅんきゅんしてます。でも、焦れったいな〜!早く両思いになればいいのに”

「(……両思い……)」

 本来ならば喜ばしいものだ。そして、私の作品としては十分な長さで、クローズに入ってもおかしくない時期である。なのに、この二人は一向に両思いになる兆しが見えない。閉じ方もまだ不鮮明。

 理由も何となくわかる。薫は片桐さんをモデルにしているから、彼の恋愛傾向がわからない。

 ──それとも、この物語を終わらせたら、きっかけが無くなるから……?

 投影しすぎている自覚がある。この物語の中に、自分の感情を落としている自覚が。

 薫が、馨さんが条件なく好きになる人はどんな人だろう。

 考え始めると心臓がチクリと痛む。だから考えるのをやめた。

 そうだ。たとえば、今までヒロインのことをぞんざいに扱ってきた薫だけど、突然大事に思うようになっちゃったものだから、扱い方がわからなくなって、手が出せないっていうのはどうだろう。

 完全に今の片桐さんだ。シナリオ通りに進めるのは簡単。けれど、現実ではむずかしい。

 デスクに突っ伏した。ひんやりとしたマットが気持ちいい。可愛いデスク周りを見てもちっとも心は晴れない。

「(……分かんないよ……)」
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