Toxic・Romance

 片桐さんの視線がスマホから私へと移動すると、彼は、にこり、いたずらっぽい笑みを浮かべた。

「な、なぜ私を撮ってるんですか?」

「え?断りいれたじゃん」

 いそいで記憶を巻き戻した。

「いれ……いれましたね」

「ほら、こっち向いて」

「やです!もう、匂わせに気を使っている私がばかみたいじゃないですか!」

「うける。匂わせたらいいじゃん」

 片桐さんはいつもこうだ。私にとってとても困難なことを、簡単に言ってのける。そして、片桐さんが言えば、出来そうな気がするから不思議だ。さすがに匂わせは、イタい女が完成するのでしません。

「片桐さん、いつか詐欺罪で捕まりますよ」

「はは、気をつけます」

「(片桐さんが敬語を使う時は、油断ならない)」

 脳内の片桐馨辞書にあたらしい説明を足す。

 お肉はとろける柔らかさですごく美味しかった。片桐さんが焼いてくれて、私は専ら食べるばかりだった。申し訳なくて「私も焼きます」と言えば「シマチョウの焼き方、分かるの?」と質問され、だまった。私のホスピタリティ力は片桐さんには全然敵わない。
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