Toxic・Romance
「ここは私が出します!」
しかし私の今日の予定は片桐さんを喜ばせること。だから会計の時はここぞとばかりにお財布を用意した。
「別にいいけど」
相変わらず片桐さんはつれない。けれどもここで引き下がってはいけない。今日だけは。
「片桐さん。実は、私には貯金があります」
「頼もしいね」
「今日の会計なんて、へっちゃらです!」
「すげーな。でもだめ」
「どうしてですか?」
「さっき言ったけど、ここ、俺の知り合いのお店。女の子、しかも年下に奢られてたって知られたらかなりかっこ悪いわけよ」
「ああ、それはかっこ悪いですね」
「だろ?カッコつけさせて」
片桐さんの頼みならば仕方ない。これが男を立てるってことなのかもしれないし、だったら素直にお財布も仕舞おうではないか。
バッグの中にお財布を戻して、ふと、立ち止まる。
「……あの、でも、それではリベンジの意味がないのでは?」
元も子もないとはこのことだ。片桐さんはふっと口から息を吐き出して、それからくしゃっと破顔させた。
「最初から、リベンジの意味がないんだよ」
リベンジの意味がない?
「どうして?」
片桐さんは、罪な人……特に、私泣かせな人だ。
「あの日、付き合ってくれただけで良かったから」
「(……どうして)」
片桐さんの言葉一つで、こんなに胸がやさしくなるのだろう。