Toxic・Romance
……なんで勘違いしたんだろ……。
これまではむしろ食い気味に反応していたのだ。それで良かった。だって私は、片桐さんの彼の幸せを応援する立場にいたのだから。
「つか、彼女がいたら月島さんと会うこともしないよ」
片桐さんの声はひたすら穏やかで、わたしの弱いところを正確に撫でるようだ。
「……どうして……らしくないです」
「だよな。俺もそう思う」
どこか諦めたような口ぶりなのに、私に向ける彼の笑顔は残酷なほど爽やかだ
「でも、悪くないよ」
なぜ、どうして。
ありきたりな疑問ばかりが胸の内側で膨らんで、泣きそうになった。
「否定すれば良かったじゃないですか」
「否定することもできたけど。あんたにとって、不誠実な俺の方が良いんじゃないの」
「(そうだけど……)」
それはまるで自分本位ではなく、私を重きに置いてくれているたしかな証拠だった。
知らぬ間にすり変わっていた価値観。
息が詰まる。重力に逆らえないみたいに、私の視線は足元へ落ちた。
「言ったのは……私、ですけど」
喉の奥が、熱いものでひりつくのを堪えながら、もう一度見上げた。
彼が他の誰かを想うことも、語ることも。それを資料として歓迎していたはずの私は、もうどこにもいない。
「片桐さんの口から、女の人の話、聞くの……いや、です」
吐き出した言葉は、むき出しの独占欲。