Toxic・Romance
聡いひとだ。そんな私の裏側を、もしかすると片桐さんは感じ取ったのかもしれない。
「……!」
彼の視線はスマホに落ちたまま。けれどその右手は、テーブルの下で私の指を一本ずつ確かめるようにぎゅっと強く握り締めるではないか。
「片桐さん誰か見て……」
「ないよ」
涼しい顔で、彼は指を絡めてくる。恋人つなぎのように。この場所で一番やってはいけないことの一つだ。彼の体温がダイレクトに伝わってきて、心臓の音が社食のBGMよりも大きく響く。
「さっきから俺に文句言いたそうな顔してるから、これで黙ってくれない?」
笑顔とセリフが一致していない。
「(……乱暴な解決方法すぎます……!)」
握る力が、さらに一段強くなる。
「片桐さん……食べないんですか?冷めますよ!」
「猫舌だから、冷めるまで待ってるよ」
「(初耳ですが……?)」
その直後、斜め向かいの席に誰かが座ろうとした気配を察した瞬間、彼は何事もなかったかのようにパッと手を離した。