Toxic・Romance

 立場が逆転した。楽しそうにする片桐さんと、たじろぐ私。身体にたまった熱を冷ましたくて、カレーに逃げた。

 片桐さんは、私にしか聞こえない声量で「味見させてくれないの?」と囁いたけれど、構わず食べた。

 私の身体はおそらく作り替えられている。勝手に胸が高鳴るし、片桐さんの視線も気になるし、頬も赤くなるのも。きっと、自覚した時は既に片桐さんのことが好きだったのだ。

「そうだ。来週の土曜日、何か予定ありますか?」

 食事を終えて、平静を取り戻せたころ、努めてさりげなく訊ねた。

 本当は、理由なんて特にない。一人でも平気だし、予定がなくても困らない。それでも、できれば一緒に過ごせたらいいなって思った。同じ時間を共有したいと思った。

 だからわたしは、いかにも偶然を装った誘い文句を、頭の中で何度も組み立てていた。

 初めての交際経験だし、正解は分からない。

「べつに何も無いよ。何か欲しいの?」

「え、なんのはなしですか?」

「何か欲しいものあるんじゃないの。買ってあげるよ、バッグとか?」

「え!?私ちゃんと貯金があるので、自分で買えますよ?」

 まるでパトロンのような物言いに、反射的に可愛げのない拒絶が口をついて出た。けれど、彼はやわらかく微笑んでいる。
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