Toxic・Romance


「そうかもしれないけれど、俺が買ってあげたいんだよ」

「え……?どうしてですか?誕生日でも記念日でも何か出来るようになったわけでもないのに」

「夕結ちゃん。彼氏は何でもない日にも彼女に贈り物をしたい生き物なんだよ」

「そうなんですね……知らなかったです」

 初めて知る恋人の定義を胸に刻む。

「で、本当は何がしたかったの?」

 見透かされたような瞳に、私は小さく息を吐いて白状した。

「あ……えっと……次のプレゼン用の資料がほしくて。付き合っていただきたいなあと……でも、一人で行けって感じですよね、ごめんなさい」

「そんな寂しいこと言うなよ」

 意外な言葉に、私は顔を上げた。頬杖をつく片桐さんと目が合って、たまらなかった。

「一人で出来ることでも誘ってくれるとうれしいよ。もちろん一人がいいときは無理に一緒にいる必要はないし、俺もそうする」

 片桐さんは、時々こうして私に魔法をかける。彼の言葉ひとつで、かたくなな私の武装は呆気なく解かれてしまう。

「なんでもないことでも、ですか?」

「うん」

「一人の方が楽しいかもしれないですよ」

「それは俺が決めるかな」

「……いつでも、片桐さんをお誘いしても良いってことですか……?」

「そう言ってる。なんでもないことでも、不安なことでも、全部言ってくれると助かる」

 片桐さんは、私の心を軽くする天才だ。あるいは、私を彼なしではいられない身体にする、恐ろしい魔法使いかもしれない。
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