Toxic・Romance


 片桐さんは「なんだそれ」と言いながらゆるく笑った。片桐さんは声がいい。百人に聞いたら九割は同感してくれるはずだ。それに、メールは捲し立てるような文量なのに、口調はゆっくりと話してくれるのもずるい。いやでも聞きたくなる。けれどその声に色気が含まれると途端に胸の内側があばれてしまうから良くない。

「あんたと話してると、頑張らなくて良いな」

「でしょう?私、コスパいいんですよ」

「俺はコスパ悪いらしい」

「そうなんですか?逆だと思ってました」

「だよな。こうなるのもあんたが初めてかも」

 ゆったりとした声が私をなぞる。本当によくない。いますぐにでも会いたくなってしまう。

「ちなみに、たとえばどんな風にコスパが悪いんですか?」

 軽い疑問を口にしたけれど、片桐さんはかたくなに教えてくれなかった。

 雨木さんからの連絡にきづいたのは片桐さんとの通話が終了した頃──入浴中も喋っていたし、ベッドに入るまで通話していたので実質寝る直前だった。

《わざわざありがとうございます。実は憧れていた作家さんなので、すごく嬉しいです》

「えっっっっ」

 こんな返事が届いていたので、入眠モードだった脳は一気に覚醒した。

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