Toxic・Romance
声の方を向けば、片桐さんがいた。片桐さんがいたのだ。
「(普段着モードの片桐さんも、いとおしい……!)」
前髪は下ろされていて、ジャケットの下のパーカー、ゆるっとしたシルエットのジャージが新鮮だ。いつもシンプルな服装を好むから余計に。耳にはピアスが光っているし、メガネもまた……たまらない。
どんな片桐さんもかっこいい……!
視界がぱあっと開けて、手招きされていないのに引き寄せられるが如く駆け寄ろうとすると、その前に雨木さんがわたしの前に立ちはだかった。
「結構です」
雨木さんがはっきりとそう言い払った瞬間。
「は?」
「えっ」
私と片桐さんの頭上には、クエスチョンマークが綺麗に並んだと思う。
雨木さんは私の袖をくいっと引き寄せて、こう耳打ちした。
「萌生さん、これ、客引きですよ。絶対そうですよ。だって雰囲気が怪しいですもん。萌生さん、人がいいし、色恋営業されてハマったら抜け出せなくなりますよ」
「色恋営業……!!」
名前を呼ばれたのは気づかなかったのか、そんなことは今どうだっていい。片桐さん(ホストの姿)が似合いすぎて、もう、胸がときめいて仕方ない。