Toxic・Romance
オフ会のことをポツポツと話していたから、あっという間に片桐さんのお家にたどり着いた。片桐さんはすぐにコーヒーを淹れてくれた。ひとが自分のために時間を費やしてくれることがこの上なくうれしい。
大事にコーヒーを飲み終えると、ソファーに招かれた。隣ではなく、膝の上に。
「さっき一緒にいたのが憧れの雨木つゆってやつ?」
「はい。そうなんです」
素直に膝の上に乗りあげると、一言も話題に出なかった雨木さんを彼は訊ねた。
私が話したペンネームをしっかり覚えてくれていた幸福で、胸の内側がぽかぽかとあたたかくなる。些細なことだけど、自分にとって全く意味をなさない知識を記憶してくれていることが大事にされていることに直結するのだと、最近、思うようになった。
私以外に、私の好きなことや趣味を尊重してくれる事がこんなに幸せだって、私は片桐さんを介入して感じている。
これはおそらく、私の家族がとても過保護で、なにをするにしても家族が納得しなければ許可されない幼少期をすごしていたからだと思う。
もちろん過保護にされることも愛情の一つだ。けれど私は常にほんのりと、自分に信用はないのかと不安だった。
だから、片桐さんが無条件に肯定してくれることがいまはただひたすら嬉しい。
「男じゃん」
けれども片桐さんはちっとも嬉しそうじゃない。