Toxic・Romance

「ごめんなさい、正直雨木さんが男性だって知りませんでした」

「ふーん」

「それはなんに対する“ふーん”ですか?」

 頭上に片桐さんの重みを感じた。私の頭に顎を乗せた片桐さんは、お腹に腕を回してがっちりとホールドした。なにごとだ。

「うすうす気づいてたんだけど、危機感がないよね」

 心外だ。そんなふうに思われていたのか、私は。

「大丈夫ですよ。だって多分、少し前の片桐さんは悪いひとでした。片桐さんを攻略した私は無敵です」

 切り札としてはかなり弱いそれだけど、いばってみせた。

「その俺が危機感ないって言ってるからね」

 片桐さんは否定しない。そんなに信用が無いのだろうか。

「通帳は死守しますね!」

 てっきりお金のことだと思っていたけれど、片桐さんは短いため息を吐くだけだった。

「まあ俺が見張ってればいいか」

 片手がよしよしと撫でる。お金じゃないなら、なんだろう……と考えた時に、過ぎったものがある。

「もしかして……ヤキモチ妬いてくれたんですか?」

 それはあまりにも幼稚で、厚かましいものだった。頭上が重みから解放される。見上げた。片桐さんの耳が赤い。

「そうだと言えば、安心させてくれんの」

「えっ」

「いっぱい甘えさせてもらおっかな」

 次の瞬間、私の身体は攫われるように抱き上げられた。
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