Toxic・Romance


 そういうわけで、冒頭に戻る。

 片桐さんにとって、私とのデートは”新鮮“らしい。悪い意味じゃなくて、ポジティブな意味だと教えてくれたそれを片桐さんは気に入っているか分からない。私は初めてだらけなのでもちろん全てが新鮮だ。

 片桐さんの車のナビには私の家の住所が登録されている。今までたまに車を出してもらうことがあって、そのたびに私がナビをしていたのだけど、今はもう、その必要がない。

 その都度、胸は嬉しさとは違うあたたかさを宿す。恥ずかしいとは違う。嬉しいでは片付けられない感情のことをしあわせと呼び、1人では感じることができない。この幸福は片桐さんによって、もたらされるもの。

「片桐さん、今日もありがとうございました。会えて嬉しかったです」

「俺も嬉しかったよ」

 近ごろは、嬉しいと返してくれるようになった。幸せである。あまり喋りすぎると離れ難くなるので、自宅マンションの前にたどり着くと、すぐに降りることがマイルールになった。

「じゃあ、おやすみなさい」

 というわけで、今日もまたすぐに車を降りるとエントランスの前で片桐さんを見送る準備をする。
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