Toxic・Romance
お風呂上がりの湿った熱気が、狭い脱衣所にふわりと満ちている。お揃い……とはいかないけれど、色味の似たルームウェアに身を包んだ私たちは、今、驚くほど静かな時間を共有していた。このルームウェアは、片桐さんが私の家に置いている彼の私物だ。お互いの家に少しづつ増えるお互いの物が、私たちの距離感を表しているようでうれしい。
「そういえば、来週……」
ドライヤーの唸るような音を突き抜けて、不意に、背後から低い声が降ってきた。鏡越しに彼を見る。こういう前置きのあとに続く言葉は、大抵、心の深いところにある大事なものだ。
「なんですか?」
けれど片桐さんは、ドライヤーのスイッチを切ると、言葉を飲み込むように視線を逸らした。
「……いや、なんでもない」
――絶対、なんでもなくない。
この人が言い淀むときは、いつだって理由がある。その理由の正体が知りたくて、食い気味に身を乗り出していた。
「なんでもなくないですよね。……なんですか?」
「……飲みの約束があったことを今思い出した。海外行ってるやつが帰国するんだよね」
「それは会わなきゃですね!?」
反射的に背中を押すと、彼は露骨に眉を寄せた。私の髪を梳く、長い指先の動きが止まる。
「……行くのだるくなってきた」
その理由を、私は聞かなくても分かってしまう。