Toxic・Romance
おそらく彼は、私と過ごすはずだった土曜の夜を惜しんで、子供のように不貞腐れているのだ。可愛い。とても可愛い。
くすぐったくて、胸がぎゅっとなる。
「わかります。分かりますけど……会わなきゃダメです。お友達、寂しがりますよ」
少しだけ先生のような口調になったのは、照れ隠しにちかいもの。
「……男だけの飲みだし、一次会で帰るよ。終わったら連絡する」
さらりと言われた一言に、胸がちいさく跳ねた。
当然のように、私が待っていることを前提とした、帰る場所を告げるための約束。
「……待ってます」
迷いなくそう答えていると、彼は満足そうにまたドライヤーを動かし始め、温かい風が私の髪を揺らす。
「飲み会の終わる連絡を俺から言うの、初めてかもな」
「そうなんですね?」
誰かに自分を律儀に報告する習慣がなかった人が、私にだけその権利を明け渡してくれる。それだけのことが、どうしてこんなに喉の奥を熱くさせるんだろう。