Toxic・Romance
「飲み会なんて野放しにしていいのー? 悪い女がいたりして」
「いません!」
反射的に、強く否定して「らしいです」と付け足した。思った以上の慌てぶりに驚いて口を塞ぐ私を見て、先輩がまたケラケラと笑う。
「信頼が重いなあ。まあ、それだけ良い男なんだろうけどさ」
全力でからかわれているのに、不思議と嫌な気はしなかった。
彼が私に向けてくれた”大事にする“という言葉の熱を私だけが知っている。優越感とも呼べる秘密が、私の心を強く支えていた。
「――と、惚気はここまでね」
夜永さんの空気が、ふっと仕事のそれに切り替わる。
「来週からの新規プロジェクト、メンバーに月島を推薦しておいたから。グループ横断の方もそろそろ落ち着く頃でしょ? こっちもよろしくね」
「……深刻な人手不足、どうにかしましょうよ」
「それは経営層に直接言って」
現実は容赦なく積みあがる。甘い余韻にひたる隙を与えないほどに。けれど今日は少しくらい忙しくても、理不尽な要求があっても、全部笑ってやり過ごせる気がする。
だってこの忙しない一日が終わる頃には、きっと、終わった、というぶっきらぼうな合図が届くはずだから。