Toxic・Romance
私のメンタルは片桐さんによって左右されている。これは揺るぎようのない事実。それはもちろん良いことの方が多いけれど、マイナスに転じることもあるんだって、私は気付かされる。
𓂃 𓈒𓏸
その日のプレゼンは、都内の喧騒から切り離された、都心でもひときわ無機質な高層ビルで行われた。
全面ガラス張りのエントランスを抜ければ、磨き上げられた床が淡く照明を反射し、響く足音までが整然と管理されているような錯覚に陥る。大手企業の本社会議室。新規事業提案をかけた、件のグループ横断プロジェクトのプレゼンということもあり、同業他社との合同で開催される。
「月島さん、あとで資料の最終確認しよう。いい?」
「……はい」
タブレットを抱え直す。今日、片桐さんはいない。別件だそう。グループ会社の中でも本社に近い人間は抱えている案件も違う。片桐さんもまた、その一人だ。
深呼吸をしても、肺の奥まで冷たい空気が入るだけ。
大丈夫、大丈夫。緊張から駆け込んだ御手洗で自分に言い聞かせながら、ポケットに手を入れた。中には真新しいメモ紙が一枚。広げるとそこには変なキャラクターが描かれている。片桐画伯によるものだ。その吹き出しには「がんば!」と書かれている。
うん、がんばろう……!