Toxic・Romance
すると、彼女は楽しげに肩をすくめ、あからさまな憐れみを私に向けた。
「だって彼、すごく傲慢で自分勝手でしょう? 好きなんて言葉も口にしないし、他人を自分のペースに巻き込むのが当たり前だと思っているような人よ。……そんな彼に付き合わされて、疲弊しない相手なんていないわ」
彼女の言葉は、まるで片桐さんの取扱説明書を読み上げているようだった。片桐さんを知っているがゆえに胸が痛くなる。
彼女は一歩だけ私に近づくと、誰にも聞こえないような低い声で囁いた。
「……その恋人に教えてあげたいな、片桐に期待しちゃ駄目だって。自信がないなら、今すぐ引き返したほうがいいわ。彼のために、人生を潰す必要はないでしょ?」
彼女は再び仕事用の顔に戻った。
「じゃあ、私は戻ります」
背筋を伸ばし、踵を返して去っていくその背中は、あまりに美しかった。 彼女の言葉は、ただの嫉妬か。それとも、私がまだ知らない馨さんの本当の顔への警告なのか。
「……はあ、自分は相手にされないって分からないのかな」
まるで呆れたような、低く吐き出された声に「え?」と首を傾げた。
「恋人なんてプライベートな情報、どうでもいい人間には教えないでしょ?その時点であの人は馨の眼中に無いんだよ」
「そうなんですか?」
「そう」
彼は至極妖艶な笑みを浮かべた。