Toxic・Romance


「俺はそう聞いてるけど?名前を間違えてたって、間抜けな話だよね」

「間抜け……」

「ニックネームだと思ったんだって。社内アドレスにニックネームつかう新卒、仕事舐めてんな、程度の印象だったんだって、最初は」

「社内アドレス……?」

「元々気になる子がいて、その子の名前をユキだと勘違いしてたらしいよ」

 思考を巡らせた。私の社内アドレスは入社したての頃、設定ミスか何かで表示名が苗字ではなく名前の一部の、”yuyu“になっていた時期が確かにあった気がする。すぐ改善されたけれど……。

「気になったんだろうね。普段は気にするはずがないのに、気にした時点でもう終わってんのに、それさえ気付かずに、その子との繋がりを途切れさせたくないがためにせっせと仕事回してたんだって。ちょう迷惑だよね」

 彼の言葉が、いつかの記憶とリンクする。

──そういえば片桐さん、月島さんのこと独占してるらしいじゃん?

──PRの同期に聞いたんだけどさ、月島さんに仕事振ろうとすると、片桐さんがいつも先にスケジュール押さえてるから、なかなか声かけられないらしいよ。

 あの頃、雑な人に目をつけられた、とばかり思っていた。けれど、本当は違ったのだ。
 彼は、私が誰の代わりでもない、私だと認識する前から、本能的に私を自分の手元に置こうと、必死に牙を剥いていたのだ。
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