Toxic・Romance


「ああそうだ。きみ、名前は?」

 ふと、切れ長の瞳が私を見据える。

「え……月島……夕結です」

 彼は満足そうに頷くと、唇に指を当てて悪戯っぽく笑った。

「だよね。俺に聞いたって言わないでね?怒られるから」

「(怒られる……?)」

 そんな話をしていると、一人の女性が「あのぅ……久住さん、そろそろ良いですか?」と困惑した様子で声掛けるので、彼は「ああ、うん。ごめんごめん」と部下らしいその子に目配せすると「じゃあ、またね」と言い残し、ひらひらと手を振って颯爽と去っていく。

 残された私は、うるさいほど脈打つのを感じながらその場に立ち尽くしていた。

 雪見さんが言った、傲慢で自分勝手という言葉は、確かにそうかもしれない。

 仕事という名目で私を囲い込み、必死に私を離さないように画策していたなんて、あまりに強引で、あまりに彼らしい。

 誤解が解けた安堵と、彼から注がれていた不器用な愛情の正体を知った喜びで、視界がじわりと滲むのを感じた。



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