Toxic・Romance
その日、片桐さんに連絡することも出来たけれど、私はそうしなかった。普段待ち合わせに利用するのはオフィスの外のベンチだけど、今日は青藍のエントランスで片桐さんが出てくるのを待ってみた。予告もなく。
だから、同僚らしき見慣れた人と一緒に片桐さんが現れたのを見て、それだけできゅんと胸が高鳴るのに、私を認識した片桐さんが同僚達を無視して私の元へ駆け寄ってくれるから、嬉しさが限界突破するかと思った。
「何してんの?」
「はい。実は今日、片桐さんに会いたい日だったので勝手に待ってました」
出待ちです、とおどけて言えば、片桐さんはどこか呆れたようにはにかむ。
「言えばいいでしょ」
「言ったら無理してでも合わせてくれそうだなって」
「そうするよね」
間髪入れずに言われた同調に、胸がくすぐったくなるのは必然。
「でも片桐さん……実は私、片桐さんに会うだけで喜ぶ生き物なんですよね」
「それで?」
「この後ご一緒できなくても一瞬会えたら良いんですよ。だったら会って直接聞いた方がいいかなーって」
「じゃあ、この後ご飯行かなくてもいいの?」
その上で片桐さんは私を揺さぶる。