Toxic・Romance
「あんたは素直に言えてえらいね」
「片桐さんが褒めてくれるから、言いたくなるのかもしれません」
私がはにかむと、彼は少しだけ目を細め、夜の空気に溜息を混ぜた。片桐さんの空気感がたまらなく好きだ。私に見せるその表情の一つ一つが、宝物のように思えて仕方がない。
「……俺、わるいひとでしょ」
「わるい人は、自分でわるい人だよって言いませんよ」
「夕結をそんな風に思わせる時点で悪いひと認定だろ」
片桐さんは自嘲気味に笑うけど、私は首を振って、そっと頬に触れた。この体温もたまらなく愛おしい。彼に騙されてもまあいっかと納得してしまいそうだからおそろしい。
「それは私の心の持ちようなので、もう暫く待っていただくと非常に助かります。慣れたらへっちゃらなので!ほら、私と片桐さんでは、生まれ持った恋愛偏差値がそもそもちがうと思うんですよ。心を広く持ってくださると……」
「あんたの物語の中の俺は、心が広いの?」
言葉の合間を縫って片桐さんが尋ねる。
「そうですね!読者さんの心を鷲掴みなので、鼻高々ですよ!」
「だめだな。本当の俺は心が狭い」
けれども片桐さんは小さく笑って、私を見下ろした。