Toxic・Romance

  その後、私はことある事に喫煙所を利用した。あの人たちの会話を聞くために、健康に悪いと分かっていて、自ら寿命を短かめようとも。

「月島、煙草臭いよ?もしかして吸う人だった?」

 こんな風に疑いの目を向けられることもあったので、最初だけ「ちょっと、用事があって」と説明し、以降オフィスに戻る前に消臭スプレーで匂いを消すようにした。怪しまれないように煙草とライターももちろん都度用意した。

 偽装は完璧。けれどもあの人と会うのは稀。
話を聞く度に私の中にある、物語の種が膨らんでいく。

 その種が物語を賑やかに、豊かにする。更新の度に反応は上々。自分でも楽しい。仕事も楽しい。どんな雑メールも、アクが強い上司の対応も、圧を掛けてくる取引先とも上手くやれた。

 こんな相乗効果が得られるなんて初めてだ。私の運勢、これから右肩上がりなのでは……!?

 気を抜いた時、調子に乗った時、はたまた、油断した時。



「あ、そうだった。外注先に連絡するんだった忘れてたー……先に上、戻るわ」

「まじか、じゃあ俺も。またあとで」

「ん」


 予想外の出来事っていうのは、大抵、そんな時に起こったりするものだ。
 
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