Toxic・Romance
喫煙室には私を含めて四人がいた。 三人はいつもの男性社員たち。そして、その隅っこに張り付くように立つ私。目的はただひとつ、私の新作の「核」となる彼らの会話を、一言一句こぼさずメモに取ることだ。
やがて二人が出ていき、重たいスライドドアが閉まった。 ……結果、何故か、二人きりだ。
(き、気まずい……!)
勝手に動悸を激しくさせているのは私だけだろう。何度かこの喫煙所を利用しているし、一度だけ会議室ですれ違ったけれど、向こうは私の名前も顔も、おそらく認識すらしていない。
彼の物語にとって、私はただの背景。名前のないモブキャラクターだ。 あと一本。今彼が吸っているその煙草が終われば、この魔法のような時間は終わる。
(私は壁、私は空気、私は無機物……)
「煙草、吸わないのにここに来るんだね」
心の中で呪文を唱えていた私の耳元に、低い、弾丸のような声が届いた。 「えっ、」 喉がひっくり返ったような声が出た。驚いた拍子にスマホを床に落としてしまい、慌てて拾い上げてテーブルに置く。
やがて二人が出ていき、重たいスライドドアが閉まった。 ……結果、何故か、二人きりだ。
(き、気まずい……!)
勝手に動悸を激しくさせているのは私だけだろう。何度かこの喫煙所を利用しているし、一度だけ会議室ですれ違ったけれど、向こうは私の名前も顔も、おそらく認識すらしていない。
彼の物語にとって、私はただの背景。名前のないモブキャラクターだ。 あと一本。今彼が吸っているその煙草が終われば、この魔法のような時間は終わる。
(私は壁、私は空気、私は無機物……)
「煙草、吸わないのにここに来るんだね」
心の中で呪文を唱えていた私の耳元に、低い、弾丸のような声が届いた。 「えっ、」 喉がひっくり返ったような声が出た。驚いた拍子にスマホを床に落としてしまい、慌てて拾い上げてテーブルに置く。