Toxic・Romance
 その人は、長い人差し指を、テーブルにポツンと置かれた私の煙草に向けた。

「その煙草、いつ見ても新品だネ?」

 にっこりと微笑む。その傾国級の笑顔、一般人には致死量レベルの破壊力だ。

 「い、いや、そんなことないですよ! たまたまです!」

「ふうん?」

 口角はやわらかい弧を描いたまま、瞳の奥に冷たい疑いの色が混じる。絶対に疑われていると謎の確信を持つ。

 ──まずい。逃げなきゃ。

 背中に冷たい汗が流れるのを感じて、私は一歩後退した。

「し、失礼します……!」

 偽装のために置いた煙草とライターを雑に掴んで、逃げるように喫煙所を後にした。

「(煙草を置くだけじゃ逆に怪しまれるんだ……! 詰んだ、絶対変人だと思われた!)」

 かと言って今さら吸う勇気もない。

 この調子で次回喫煙所に行ってもさらに怪しまれるだけだろう。

 今後、喫煙所は無理かあ……。

 気を落としながら、せめて今日の成果をスマホに……と思った瞬間、ポケットの軽さに心臓が止まりかけた。

「え゛っっ」

 無い。  スマホがない。

 さっき、テーブルに置いたまま──スマホだけ忘れた?
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