Toxic・Romance
流れるがごとく全力でUターンし、喫煙所へかけ戻った。
喫煙室に向かうための曲がり角を曲がったその時「わ!」と、誰かと鉢合わせた。ふわり、濃厚なあまい香りと共に煙草の香りが漂う。
見上げる。視線のわずか先にあの人がいて、心臓が静かに跳ねる。
「ご、ごめんなさい」
「いいよ。忘れ物?」
「そうなんです!」と、頷いた直後、違和感に襲われるのはおよそ必然で、ほぼ無意識に「どうしてそのこと……」と、疑問を口にした。
「これ」
極上の笑みを浮かべたまま、その人は私の目の前にマイスマホをゆらりと翳す。
ああ、なるほど、私のスマホを見つけてくれていたのね?
顔が良い上に優しいなんて。女性に対する恋愛観はかなり独特だし理解しがたいけれど、そりゃあモテますよね~!
美しいものは、見る人の心を奪う。
その笑顔に奪われたのは、私の油断。
「ありがとうございます!」
そんなふうに納得させながら受け取ろうとするけれど、何故かその人は一向に渡してくれない。
渡す気がないと判明したのは、直後だった。
「小説?」
紡がれた言葉に、心臓が凍りついた。