Toxic・Romance

「お願いします、書いたことは謝るので、い、いわ、言わないでください!」

「執筆のこと? 喫煙所通いのこと? 俺をモチーフに小説を書いてること?」

「ぜ、ぜんぶ……です」

 我ながら、まったく我儘な返事である。
 
「ていうか、」

 彼が発した、頷くでもなく、ましてや否定でもない軽い言葉に、背筋が条件反射みたいに伸び「はい!」と、小物よろしく勢いまかせの返事をした。

「著作権って、知ってる?」

「ちょ、著作権……?」

聞き返した瞬間、私は何かを悟った。

「じゃあ著作権って人物にも該当することはご存知?」

 知っている。
 知っているに決まっている。

 なのに、今の私の頭は、都合よく知識を引き出せない。

「俺ね」

 彼は少しだけ声を落とした。

「俺自身を勝手に使われて、傷ついちゃったなあ」

 冗談なのか、本気なのか。判断がつかないのが、いちばん怖い。

 けれど、ただひとつだけ分かる。今この場で主導権を握るのは彼だし、本当に傷ついていれば泣くなり怒るなりするはずなのに、彼は表情を一切変えない。

 彼はただ、この状況を「利用」しようとしている。

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