Toxic・Romance
「……じょ、冗談、ですよね」

断れば終わる。受け入れたら、たぶん、別の意味で終わる。

意味は理解できないくせに、自分の未来は何故かわかる。


「一回につき、いちど」


淡々とした声だった。値段を告げるみたいに、感情の起伏もなく。

「……いちど?」

聞き返した私の声は、思った以上に小さかった。胸の内側で鳴る、自分の鼓動にさえ簡単に飲み込まれてしまいそうなほど。

「俺が欲しいと思ったタイミングで」

そう言って、彼は少しだけ笑った。
いつもの、余裕のある笑み。でも今度は、その奥に、私だけが見てはいけないものを覗いてしまった気がした。

冗談なのか、本気なのか。
その境界線を、わざと曖昧にしたまま差し出される条件。

逃げ道は、ちゃんと用意されている。拒否すればいい。
たったそれだけのはず。
 
「……それって」
「馨」

私の言葉に誰かの声が重なる。

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