Toxic・Romance
それがどんな形をしていても、人には少なからず秘密があるはずだ。それらを簡単に暴くことに、人はもっと慎重であるべきだ。
簡単な返事で踏みにじるくらいなら秘密のままの方が良い。その人が言うまで、私も何も言わない。
「あいつ急かすよね〜!ムカつくけど、仕事に関しては悪いやつじゃないよ。あとめちゃくちゃかっこいい。雑だろうが圧力かけようが、顔だけでチャラにしてる説濃厚」
この過去は夜永さんにとって、“大丈夫 “な過去だったらしい。
「私はあの人の顔には屈しません!!」
「おー、がんばれ!」
決意を改め、意気込んだ。
世界には誰にも覆すことが出来ない絶対的なルールがある。そう、いくら私が祈っても、時間は等速に流れるものだし、やっぱり──片桐馨は顔が良い。
「おつかれ」
やって来た金曜の18時。待ち合わせ場所に使われるのがエントランス正面のクリスタルのオーロラ像だけど、その反対側にひっそりと、グリーンアートの壁面植物で彩られている場所がある。
先に到着したのは私。だけど片桐さんは、五分も経たずにやって来た。
「……」
笑顔を浮かべることなく、睨みつけるなど出来ず、ましてや喜ぶなんてありえない。スンッとした表情で出迎えた私をみて、片桐さんは破顔した。