Toxic・Romance
歪んだ笑顔の理由を、私は分かってしまった。
「(それ、いつか私が送ったセリフでは……?)」
脳内の黒歴史フォルダが勝手に開き、数週間前に私が彼に送った、嫌味たっぷりのメールの文面が鮮明に蘇る。
《本来であれば数週間を要する作業ですが、片桐さんからの無理難題を快く聞き入れるのがモットーですので。ぜひ、全力で労わせていただきます》
あの時、画面越しに「ざまあみろ!」と叫びながら叩きつけた皮肉の一節。おそらくそれを彼は一字一句違わずに記憶していたのだ。
しかも、今度は彼が「上位者」として、私の逃げ場を奪うためにその言葉を再利用している。
「…………っ」
自分の放ったブーメランが、鋼鉄の質量を持って、時速150キロで後頭部に直撃した気分だった。
「……覚えて、たんですね」
「月島さんのメール、面白いからね」
「片桐さんは随分と笑いのハードルが低くいらっしゃるようで、助かります!」
「褒められたのは初めてだよ。ありがとう」
「こちらこそ、一端の感想に感謝されるとは思いませんでした。お優しいんですね」
「あれだけ威勢のいいこと言ったわけだし、まさか今さら、接待されるのが怖いなんて言わないよね?」
「ええ、ちっとも!」
本当は、怖すぎていますぐ泣きたいくらいです。