Toxic・Romance


「私、日々のストレスの捌け口として書き始めたんですよね。私に分不相応の仕事量を寄越す人がいるでしょ?」

「なのに、息抜きにストレスの原因を使ったわけか」

「不本意にも、結果的にそのような状態になりました」

「俺に言われてもね」

「そう、片桐さんはなにも悪くないです。分かってます。会社の体制がそうさせているだけで、仕事だって割り切れない私が悪いんですよね」

「それだけが理由?」

「現実は汚いことばかりで、頑張っても報われないことが多いから、せめて妄想の世界で消化させたかったんです」

「ふうん。自分の為ってこと」

「他人の為に趣味に費やす人っていないと思いますよ」

 確かに、と呟いた片桐さんは運ばれてきた料理を中央に置いた。慣れたような手つきだ。片桐さんの何に引かれるのだろうかと観察してしまう。

 顔? ううん、骨格? それとも声?

 ぼんやりとそれを眺めていると「ここの出汁巻き、美味いよ」と、ふんわりした黄色の四角を差し出される。さっきから、私は全然動いてない気がする。

 食べて、飲んで、愚痴って、飲んで。

「どんな話書いてるの?」

 温度のない質問が心地よい。
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