Toxic・Romance
ゆるやかに、思考回路がアルコールに浸されている感覚があった。それでも、好きなことに対しては引き出しが無限にある。
「至って普通の恋愛ものです。高校生とか、学生の恋愛が多いですね」
しかし、今まで誰にも内緒を貫いてきたからこそ、慎重に言葉を選んだ。
「ああ、女の子が好きそうなジャンル」
片桐さんがくれたのはシンプルな感想。初めて生身の人間に創作の話を打ち明けた相手があの大っ嫌いな片桐馨になるなんて、いつの私が思っただろう。
「片桐さん、読書はされるんですか?」
「するよ。するけど、恋愛メインの話は全くそそられない。これは映画でも同じ」
「そうなんですか?」
「曖昧な感情を見せられるだけの時間に価値を見い出せないわ」
なるほど、冷めてるなあ……。
けれど、彼の恋愛観に触れた以上、その感覚も納得出来る。
片桐さんにとってこの時間もまるで仕事の延長線。強いていえば、たまたま見つけたおもちゃがおもしろい形をしていたから、少し遊んでみようかな、と、気まぐれに選ばれただけ。
月島夕結という人間にまったく興味を持たれていない、その自覚があった。