Toxic・Romance

 そもそもの話。わるいことを先にしたのは私だから、嘘をついて逃げるなど言語道断だ。

 彼は私に体重を預けながら、スーツのジャケットを脱ぎ捨てた。整えられていたネクタイも、細い指先によって無造作に緩められていく。

「あ、あの……本当に私として、いいんですか」

 それでも私は震える声で、必死に理性を繋ぎ止める。

「なにが?」

 囁きと共に、彼の吐息が耳たぶを揺らした。

「好きでもない相手ですよ? 本当に、良いんですか」

 せめてもの拒絶を口にすると、彼は私の目を見つめ、艶っぽく口角を上げた。

「それの何が問題?」

 まるで理解不能な言語を聞いたかのようだった。そのまま、躊躇なくブラウスの裾から手のひらがが差し込まれて、びくりと身体を揺らした。肌を直接開拓していく指先の温度に、思考が散乱してゆく。

 スカートのファスナーが下ろされる。静かな部屋にその音は異様に響いて、私の羞恥心を煽った。

 ──やめたほうがいい。分かってる。

「……片桐さんって、かわいそう……ですね」

「んー?」

 私の鎖骨に鼻先を埋めたまま、彼は甘く、気怠げに応じる。

「だから恋愛に価値が見いだせないんじゃないですか?」

 やめたほうがいいってわかるのに、溢れる言葉の羅列を止められない。

「大学生ならまだしも、良い大人がそれなの、ちょっと、ださいですよ」
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