Toxic・Romance
私の言葉が響いたのか、片桐さんは一瞬だけ動きを止めた。荒れた息を整えるように、肩を上下させながら片桐さんの様子を伺う。
やがて彼は、陶器の置物を扱うような優雅な動作で身体を起こし、私を射抜くような視線で見下ろした。
「……だったら、月島さんが教えてよ」
口元に浮かんだ笑み。しかし、目には1ミリも笑顔は宿っていない。
踏み込んでしまったことを理解する。
「正しい、レンアイってやつ」
「えっ」
聞き返す暇なんて、一秒も与えられなかった。 降ってきたのは、先ほどまでの丁寧さとは似ても似つかない、暴力的で深い口付け。
「ん……っ」
声にならない音が、喉の奥で潰れた。驚きで漏れた吐息さえ逃がさないと言わんばかりに、角度を変えられ、呼吸の隙間を奪われる。
唇が離れたのは、私が息を求めて身じろいだその直後。額が触れるほど近い距離で、片桐さんは変わらず微笑んでいた。
「……ほら、そうやって煽るから」
どこか楽しげに、でも目はちっとも笑っていない。彼は親指で、私の唇の端をなぞる。
「俺みたいなのに、捕まるんだよ」
そう言って、彼は一度だけ視線を落とした。